アイスクリームが食べたい。
板チョコに挟まれたバニラアイスの詰った、アイス最中限定。
オレンジゼリーが食べたい。
オレンジ色の液体の中、果肉がめいいっぱいに詰ったコンビニにしか売っていないあれ。
ヨーグルトが食べたい。
誰が考案したにか知れない、ヨーグルトの中で最高に美味しいアロエヨーグルト。
プリンが食べたい。
黄身色の層と甘苦いカラメル、独特のなめらかさはは駅前のケーキ屋だけの味。
かき氷が食べたい。
味は濃厚で甘過ぎる練乳か甘酸っぱいレモンがいい。
苺が食べたい。
少し含んだだけで甘い汁は喉を刺激して、芳醇な香りは鼻孔をくすぐる。

然し何よりも一番に望むのは京。

渇いた咽から引っきり無しに咳が洩れる。
ぐらぐらと揺れる脳味噌はもうまともに思考を繋がない。
全ての関節がミシミシと悲鳴をあげていた。
氷枕も溶けきってただの水枕と化している。
気が遠くなりそうな中で聞こえる雨音はまるでノイズのようだ。

雨の音しか聞こえない。
いつもなら聞こえる外界の音が何ひとつしない。
世界には人が溢れているのにまるで孤独だと感じる。
こんなにも独りきりは弱々しい。

だから呼ぶのだ。
熱のせいで荒れた唇で小さく呼ぶのだ。
愛しいただ一人の彼の名を。

敏弥の38度の高熱は食欲よりも愛欲に飢えている。








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