「世界の秩序に邪魔されとう」
飴色の金糸の間に覗く漆黒の双眸に光を見た。
光というよりはむしろ焔と言うのが、其れには相応しいのかもは知れない。
眼に宿る黒い焔。
焔の化身は赤い蜥蜴だと、何かの小説で読んだ記憶がある。
常に見る表現者としての背中には確かに焔を感じていた。
業火の如くの荒々しさはない、静かに揺れる、然し放つ熱量の凄まじさは恐らく彼自身に自覚はないだろう。
「崩れへん壁みたいな秩序はどないしたら登れて超えるやろか」
形良い唇は哲学的な呟きを終えると、結びながら端で孤を描いた―ほくそ笑むとはこういう事だ。
これは面白いことを考えついた時に見せる特有の癖。
まるでマジシャンが鮮やかなタネを思いついた時のように、シェフが極上の味を作り出した時のように、ペテン師が最高の仕掛けを編み出した時のように、唇は笑み続ける。
正しくの歓びなのだろう。
戻した視線の先の眼は心中そのままにか、爛々と燃えている。
飴色をした髪が溶けそうな其の熱。
焔を宿した双眸から黒い蜥蜴が這出たように見えた。

表現者になる時は間近なのかも知れない。












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